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お知らせ

解体通信 006

解体通信

新解体 第006号(2017.09)

総務情報委員会

 晩夏となりましたが、少しは涼しさを感じることができますか?

 毎年、協会事業として自然環境啓蒙の視察研修を行なっています。今年は山陰地方へ

出向きます。鳥取、島根はどちらが西かわかりますか?この事業でしかお会いしない方々

もいて七夕の織姫~彦星の如く、再会するのも楽しみの一つです。

 来年は、伊勢~志摩辺りかと期待していますが、今年の出雲大社から伊勢神宮へ荘厳

厳粛な旅となるでしょう。

 さて、今回は解体工事における関係法令の労働安全衛生法について述べます。

【労働安全衛生法】(以下、安衛法)

 安衛法は、昭和47年、45年ほど前に制定された法律で労働基準法と並立し、労働安全

衛生施行令をその下に配し、さらに下に労働安全衛生規則、粉じん障害防止規則、石綿

障害予防規則、特定化学物質等障害予防規則等が控えています。

 過去には労働省、現在は厚生労働省が管轄しています。

 さて、昭和の終わり頃、30数年前に会社を興した折、最寄の労基署へ出向き、いささか無

粋な質問を監督官にした記憶があります。

1)現場の作業員が保安帽をかぶるのが嫌で作業していて頭部にけがした場合も会社の

責任になるのか?

2)安全は、社員個々の責任であり、それらを就業規則に記載してもいいか?

 まったく怖いもの知らずでした。監督官のお答えは、言うまでもないでしょう。安衛法にお

いても多くの条文の始まりが、『事業主は・・しなければならない』ですから・・

 確かに戦後の日本や外国の一部地域の建設作業を見ると保安帽はかぶっていません。

ねじり鉢巻、麦藁帽子が主流でした。また保安帽をかぶっていてもあご紐がありません。

いつから現在のような「当たり前」になったのでしょうか。事故多発、死亡災害多発が原因

でしょうけど・・道路開口部から第三者が落ちると、その行為が立入禁止策柵を越えての

行為でも業者責任に問われます。まったく迷惑します。こどもが遊びに入った解体工事現場

で躓いて転んで怪我しても同様に我々の責任問題です。

1.身近な災害事例

1)住宅改修工事において解体工事業者が発生材を1階に投下する為に開口した2階床

から、他の業者が転落した。

正直言って解体工事業者にとっては迷惑千万ではありますが、転落防止策はあったと

思います。この現場では解体工事業者が床を開口し、発生材投下後、作業終了のときに

踏み抜きしないような取り外し建具にて仮塞ぎをして帰り、翌日は休工したこと、共に作業

していた大工に申し送りしなかったことがまず原因として上げられますが、それを知らない

電気業者が2階に上がり、開口を見つけ、この塞いだ建具には乗っていけないなと思いつ

つの作業中、思わず踏み抜いて転落したということです。

もしかすると終業後、家人が様子を見に来て同じように転落することも考えられます。実

際、私も自宅の改造工事期間、毎日朝早く、工事の進捗状況を見に行ったものです。

そこでこの現場では、以下のような再発防止対策を講じました。

・毎朝のミィーティングで昨日と変わった現場状況を周知したか

・開口後、通常床(上っても踏み抜かない)に仮塞ぎしたか

・開口部にコーン、バリケード等の立入禁止措置を講じたか

・見やすい箇所に看板等を掲示したか

・ミィーティング後、入場するであろう関係者への周知はどうするのか

もし転落して打ち所が悪く、死亡或いは大怪我していたら、と思うとぞっとしますね。

2)住宅を人力解体している現場作業中、玄関庇上に載り、雨樋撤去をしていた時、軒先

が腐食していて踏み抜いて地上に転落した。

解体工事を営業していると特に地方部では、重機解体できる住宅ばかりでなく、運搬車

も重機も乗入できない現場が多くあります。当該現場もそうであり、人力解体工法を採用

し、発生材を一輪車等で数十m、小運搬しなければならない場所でした。

発生原因は色々考えられますが、単なる不安全行動であると結論を下すのは安易なこ

とでしょう。ちなみに被災者は60歳、膝に持病があり、大工の経験有でした。

(災害の原因)

・庇の軒先部分の下地が腐食していた

・屋根勾配に対し、逆向きに作業をしていた

・親綱の未設置、安全帯の未装着

・現場代理人は被災者単独作業は危険なので二人作業をしていたが、指示

が不適格であった

・慣れ作業による、不安全行動

(再発防止対策)

・本雨樋は、地上から脚立足場等を設置して行なう

・屋根上から撤去するのであれば、親綱設置、安全帯着用を徹底する

・休み明けの始業間際、梅雨時期の蒸し暑い時間、気持ちに隙を作るな

・作業配置の適正の判断の徹底

・廻りの作業員の声掛け励行

・誰がどんな作業をしていても転落しない、対策を考える

(検討事項)

・単独作業でなく、二人作業の重要性を痛感、被災後の対処が良かった

・当該作業は地上からするのが有効である

・屋根セメント瓦撤去後の作業であり、その時に下地材の腐食に気づいたな

らば、情報を共有すべき

・屋根、庇が外周に手摺等を配置した足場組や下地補強材の設置をする

2.今後の作業従事者教育(前回の通信でも触れましたが・・)

石綿作業、足場組立等作業の従事者が全て教育を受けなくてはならないようになりまし

たが、今後、特別教育なり、技能講習が予測される解体工事関連業務を上げてみます。

・屋根上作業従事者

・煙突の耐火煉瓦解体作業従事者、作業主任者

・断熱材撤去作業従事者

・コンクリート斫り作業従事者

・木造解体におけるチェンソー作業従事者

事故災害が起きると法の改正が沸き立ちます。全国何処かで起きた災害が、起因となり

国主導で法令が制定される。ほんのわずかな不届き者の為に・・と思わないで、彼等が危

険を知らせてくれたんだ・・と思いましょう。

全国各地を巡っていると屋根の瓦を見たことが無い、当然上って瓦降しをしたことが無い

人がたくさん居ます。その人たちに瓦撤去時の留意事項をと言ってもピンとこないでしょう。

しかし法令はそういうものです。日本は鎖国ではないし、都道府県に関所はないのですか

ら、今経験していなくても今後経験することもあるのですから。

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